TOP ぬかぴーのツブヤキ ╞╪╡ 鐵 學 ╞╪╡ (7) 通行手形が無いと走れない

ぬかぴーのツブヤキ

発信者:ナナわんこ
2024.02.22

╞╪╡ 鐵 學 ╞╪╡ (7) 通行手形が無いと走れない

「鐵學(てつがく)」と称して、永遠に交わることのない2本のレールにまつわるお話をツブヤいています。
その第7回目は、列車を安全に走らせるための「しくみ」のお話です。

通票(タブレット)のある風景

線路の単線・複線はご存じだと思いますが、単線の場合は同じ線路を上り・下りで共用しているため、当然どちらか1本の列車しか同時に走ることはできません。その安全を確保するしくみが「閉塞(へいそく)方式」という衝突を防ぐための信号保安システムなのですが、それはまた別の機会につぶやいてみます。

ここでは代表的なタブレット閉塞方式の風景を紹介します。
タブレットとは写真にあるような輪についた革ケースに収められた金属板=通票のことですが、それを吊り下げたこの輪も総称して一般的にタブレットといいます。通票には駅間ごと決められた異なる形状の穴が空いています。三角(サンカク)、四角(ヨンカク)、丸(マル)、まれに楕円の種類があります。

革のケースの丸い穴に真鍮製の通票が納められます(日本工業大学工業技術博物館)
通票を発行する機械、A駅・B駅それぞれにあり、通票が発行されます(東武博物館)

たとえばA駅からB駅に通行する101列車は、サンカクの通票をA駅で受け取り、それを持ってB駅まで進みます。
C駅からはヨンカクの通票を持った102列車がB駅に入ってきます。
B駅では101列車は102列車が返却したヨンカクの通票を受け取りC駅に進みます。102列車は同様にサンカクの通票を受け取りA駅に進みます。
同一区間にはつねに決められた通票を1個発行して、それを持つ列車だけが単線区間に入れるしくみになっています。

実際の通票の発行は、A駅=B駅間で連絡を取り合い、発車側の駅の機械から通票が発行され、列車に持たせますので、持って行ったタブレットが戻されなくとも2本連続同方向でも通行ができます。

それでは昔の写真を見てみましょう。
まずは駅に到着しタブレットを渡すまでです。

列車が次の駅に向かっていると、遠方信号機(腕木信号機)も進行を示しています。機関士と機関助手がともに確認しています。(川越線・1969)
場内信号機も下がって進行を示し、まもなく駅です。(川越線・1969)
助手がタブレットをもってホームの助役さんに渡そうとするところです。(川越線日進駅821レ・1969)

では駅のホームの風景も見てみましょう。

下り線に入線してくる列車にタブレットを渡そうと待機している助役さん、写真の上り荷物列車は信号が変われば発車します(関西本線関駅・1973)
運転士からタブレットを受け取り交換列車に向かう駅長さん(八高線小宮駅・1969)
右肩に前駅からのタブレットを受け取った助役さんが出発を待ちます(成田線湖北駅・1969)
高速でのタブレット授受は危険なので、受取には棒状のキャッチャーを開いて爪に引っ掛けます(紀勢本線多気駅・1973)
駅側の受け取りは、らせん状の棒に機関車から手を伸ばし引っ掛けます(八高線小川駅・1974)

上の写真の川越線や成田線、八高線(高麗川~八王子)は通勤電車が走る近代的な駅となり、昔の写真を思い出す手がかりもありません。昔は当たり前だった風景は、もはや「知らない」時代となりました。