ぬかぴーのツブヤキ
╞╪╡ 鐵 學 ╞╪╡(120) 路面電車で温泉へ
「鐵學(てつがく)」と称して、永遠に交わることのない2本のレールにまつわるお話をツブヤいています。
今回は路面電車でありながら、急坂を登り温泉地に乗客を運んだ路線についてです。
「東武鉄道伊香保軌道線」で伊香保温泉へ
温泉県の群馬には古代から草津温泉と並んで伊香保(いかほ)温泉が開湯され賑わっています。
草津・伊香保ともに現在では直接鉄道でのアクセスはできませんが、かつて草津へは軽井沢から草軽電気鉄道という軽便鉄道が1962年まで走っており、今回取り上げる伊香保へは1956年まで東武鉄道伊香保軌道線が走っていました。
伊香保軌道線は前橋駅前~渋川駅前を結ぶ前橋線(14.5km)、高崎駅前~渋川新町間を結ぶ高崎線(20.9 km)、そして渋川駅前~伊香保を結ぶ伊香保線(12.6 km)、があり路面電車でありながら総延長48kmにおよぶ路線でした。しかし経営は苦しく、また戦後のバスとの競合により高崎線(1953年)、前橋線(1954年)は廃止されました。
渋川駅前~伊香保を結ぶ伊香保線は専用軌道ということもあり残る可能性もありましたが、赤字経営と車両などの老朽化のため1956年に廃止されました。
復元された車両が見られます
廃止から半世紀以上が過ぎ、廃線跡もほとんど痕跡が残らないなか、当時の車両が復元・保存されています。
高崎線や前橋線は路面電車の路線にふさわしく、緩い上り坂をのんびりと走っていたようですが、伊香保線は標高185mの渋川駅から伊香保温泉入口まで12.6kmで500m以上も登る急勾配の路線で、当時の写真を見ると丘陵や木立のなかを歩くような速度で走っていたそうです。逆に下りではモーターをほとんど回すことなく、惰性で渋川まで降りて行ったそうで、滑走・脱線を防ぐ線形になっていました。
余談をふたつ
1926年生まれの亡母は、小さいころ高崎から渋川で乗り換えて伊香保温泉まで「チンチン電車」で長い時間をかけて行ったとよく話していました。
また高崎から三国街道を走った高崎線には「野良犬」という珍しい名前の停留所がありました(現・前橋市清野町(きよのまち))。野犬ではなくこの地にオオカミが多かったことから野良犬村とかつて称されたとのことです。現在その名は無く、清野町の八幡宮にある「前橋市指定重要無形民俗文化財 野良犬獅子舞」の表示板がその名を伝えています。
